風の栞
嵐の後の春の足音。優しく耳に心地良いチェレスタの音色に導かれた一陣の風のようなシンバルからこのアルバムは始まります。
中島ノブユキさんの曲に、誰もが待ち望む春の色彩あふれる北の街の様子をイメージして歌詞を書きました。
ところで、曲中にほんとうに足音が録音されているのをお気づきでしょうか?
雨上がりのうきうきした気持ちを感じていただけたらうれしいです。
嵐の後の春の足音。優しく耳に心地良いチェレスタの音色に導かれた一陣の風のようなシンバルからこのアルバムは始まります。
中島ノブユキさんの曲に、誰もが待ち望む春の色彩あふれる北の街の様子をイメージして歌詞を書きました。
ところで、曲中にほんとうに足音が録音されているのをお気づきでしょうか?
雨上がりのうきうきした気持ちを感じていただけたらうれしいです。
「あぁ まだあの浜辺はわたしをおぼえているかしら?」
アルバム制作のイメージ段階の時期、ちょうど一年前の嵐の日にこの曲のスケッチを描きました。ジョアン・ジルベルトの「Estate」を中島ノブユキさんに教えてもらって以来、私なりの「夏」の忘れがたい想い出を曲にできたらなぁ、とずっと考えていました。完成したものを聴いて、自分の心の中にしかない光景が、もはやたどり着くことなど出来ないと思っていた、あの「夏の日」が鮮やかに目の前に広がるのを感じます。胸をしめつけられるようなストリングスアレンジ。
青春の日々への鎮魂歌(レクイエム)。私の音楽人生の中で、奇跡を感じる1曲にしていただきました。
もともとは中島ノブユキさんのピアノソロアルバム「カンチェラーレ」の中の曲に、かしぶち哲郎さん(ムーンライダーズ)にお願いして歌詞を書いていただいた作品です。 仄かな狂気とエロティシズムを感じさせるかしぶちさんの歌詞。
エンディンングで「雨」というテーマに収斂してゆく見事さ。この素晴らしい歌詞に納得がいく歌のテイクが録れるまで、ずいぶんと時間がかかりました。藤本一馬さんのジャンルレスなギターの魅力、哀愁漂う北村さんのバンドネオン。
それにしてもなんて美しい曲。私にはなぜか舞踏家の大野一雄さんが踊っている様子がちらちらと目に浮かんでくるのです。
子供の頃から私は雨が好きでした。雷が鳴っているときは神様がいるから決して外を見てはいけない、と祖母に教わってからは雨の日は私にとってほとんど神聖なものとなりました。
この曲はずっと昔から雨の日には必ず聴いていた曲です。ただ、フランス語が分からない私は中島ノブユキさんに教えてもらうまでこの曲が雨のことも歌っているのだということを知りませんでした。ギターのフレーズが雨だれを思わせるものがあるなぁとは感じていましたが、今回初めてそのことを知りびっくりしました。根気強くフランス語の発音レッスンをして下さったのは「Coffee&Music」でもお世話になった萩尾英理子さんです。彼女が訳して下さった和訳の歌詞もとても素晴らしいので、ぜひご覧ください。
前回のソロアルバム作品「わが美しき故郷よ」の中でも歌詞を書いていただき、ツアーも一緒にまわらせてもらった、おおはた雄一さんに再び歌詞をお願いしました。ベースの鹿島達也さんとは初セッション。
鹿島さんにはエレクトリックベースとアコースティックベースの二種類を弾いてもらっています。
その鹿島さん曰く、「最上級にすごいドラムってロールスロイスに乗っているみたいって喩えがあるんだよね」と仰りドラムの屋敷豪太さんを讃えておられました。今回屋敷さんには3曲お願いしましたが、どの演奏も神がかったように美しくセクシーでそれはそれは特別な体験をさせていただきました。ギターの福原さんとも久しぶりのセッション、相変わらずがっちり頼りになる演奏がかっこ良かった!コーラスアレンジでどんどん引き込まれて広がっていく世界、エンジニアの奥田泰次さんのディレイをきかせた音づくりも圧巻な曲です。
もし自分が雨の日をテーマにしたアルバムを作るとしたら絶対にカヴァーしようと思っていた曲。個人的にもなじみに深い曲です。
カレン・カーペンターの歌声はもちろん、オランダのジャズシンガーのアン・バートンの密やかで映画のセリフのように静かに歌うヴァージョンもとっても素敵で今回の歌のフィーリングの元となっています。
庭の草木の影がざわっと揺れるようなストリングスの導入部分からエンディンングまで中島ノブユキさんの美意識溢れるこのアレンジ。スタンダードナンバーに新たな名ヴァージョンが生まれたのではないかと思っています。
幕間。雲から差し込む幾筋かの光。翳る空。意識の流れはどんどん進む。
あなたはわたしで、わたしはあなた。
夜と雨への静かな予感。
私たちの心の底には私たち自身でも気がつかない無数の情熱や絶望が救いを求めて彷徨っている。
雨の日はそんな自分でも知らない自分の潜在意識、またはパラレルワールドへの入り口となり私たちに語り得ない事を語ろうとさせてくれる、ずっとそんな気がしていました。まさにその事が私が雨の日のアルバムを作りたいと思った理由のひとつです。そして2011年、東北の地に荒野を見ました。東京の街もまた荒野として目に映る時があります。
『あなたが思うよりも人生は短く あなたが思うよりもはてしもない』
この曲の歌詞はそんなところから生まれてきたのかも知れないし、私が40歳になったからかもしれません。
長年愛読してきたマルグリット・デュラスの「ロル・V・シュタインの歓喜」の男女のヴィジョンもまたこの曲のインスピレーションになりました。夜と雨の幻想の中、聴いてくださる方と深いところでお会いできたら、と思っています。
1stソロ・アルバムからのセルフカバー。久しぶりにギターの小沼ようすけさんと、そして中島ノブユキさんと。
うまく言えないんだけれども小沼くんの演奏を例えて言えば、風が吹いて木々が揺れる、何十億年の今まで一度として同じではなく打ち寄せたであろう波の様子、空も知らない雲のかたち、等々・・・。地球上のあらゆる自然がただそうであることと同じような種類の尊さを感じさせてくださいます。う~ん、伝わるかなぁ?(笑)。
ゆえにこの曲のテーマ願い、遥かなる普遍性と愛への希望が素直に表現されたのではないかと思っています。
それにしてもこんなピアノを弾ける人もそうそういないようなぁ、とレコーディングの時に小沼くんと語りあったのでした。
今から15年以上前かもしれない。リトル・クリーチャーズの鈴木正人くんと中島ノブユキさんと3人で中島ノブユキさんの群馬に実家に泊まり込んでデモテープ制作をしました。あれ、楽しかった。この曲はその時に一度デモとしてレコーディングした中島ノブユキさんの曲です。この曲大好きなんです、15年経っても全く色褪せていない。
今回はギャビー&ロペスのお二人、石井まさゆきさんにギターを森俊二さんにはコーラスで参加していただきました。ギターのカッティング、かっこいいなぁ。花びらが散る様子を表現してくださった箇所も美しいしいなぁ!ソロにあふれる何事かへの渇望、いいなぁ!そして森さんのお声の危うげな色っぽさ、打ち込みのリズムとシンセベースのエロティックさと相まってくせになるような魅力のトラックになったのではないでしょないでしょうか。ご自分のパートが終わられたにもかかわらず、夜中までスタジオにいて他の曲のレコーディングを見ていて下さった森さんのお姿が嬉しかったです。
オフコース、小田和正さんの初期の頃の作品のカヴァー。
『雨の降る日は いつでも時はさかのぼる』。このワンフレーズに今作品のテーマが凝縮されています。
アルバム最後の曲は敬愛するエミリー・ディキンスンの詩に私が曲をつけたものです。
エミリー・ディキンスンの詩はメロディーを望んでいるような気がしてなりません。
ポート・オブ・ノーツ(ギタリスト小島大介とのユニット)でレコーディングした「If you were coming in the fall」につづいて2曲目、厳密には彼女の詩をモチーフにしたやはりポート時代の曲を含め3曲目の勝手に共作作品です。
演奏はピアノと歌だけの静謐な世界。
『あなたとともにいられれば 嵐の夜も豪奢の極み』
と綴った彼女の精神性を感じていただけたら非常に幸いです。