トロント国際映画祭プラットフォーム・コンペティション部門正式出品作品
森山未來、藤竜也の圧倒的演技が際立つ、近浦啓監督によるサスペンスヒューマンドラマ。
【STORY】
卓(森山未來)は、ある日、小さい頃に自分と母を捨てた父(藤竜也)が警察に捕まったという連絡を受ける。妻(真木よう子)と共に久々に九州の父の元を訪ねると、父は認知症で別人のようであり、父が再婚した義理の母(原日出子)は行方不明になっていた。卓は、父と義母の生活を調べ始めるが——。
初監督作『コンプリシティ/優しい共犯』に続き、長編第2作目にして世界の映画祭で受賞、絶賛評を博しその勢いは止まらない近浦啓が監督。森山未來が主演を務め、藤竜也と親子役で初共演を果たしたヒューマンサスペンス。
【ARTIST】
糸山晃司 koji itoyama
1991年生まれ。福岡在住の音楽家。これまでに国内外から4枚のフルアルバムをリリースし、新進気鋭の作曲家として注目を浴びている。ピアノ、シンセサイザー、室内楽、電子音響、フィールド・レコーディングなどを用いたコンテンポラリーな音楽表現を得意とし、近浦啓監督の『コンプリシティ/優しい共犯』(18)で映画音楽デビューを果たした。
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この世界と共鳴するために
「大いなる不在」という作品は、この企画を構想した2020年の暮れから2021年にかけての社会の景色に大きく影響されている。パンデミックの支配が始まった頃はその唐突な非日常性のインパクトに浮き足立つような感覚を覚えたが、1年も経つとその非日常の景色にも慣れ、「次は第何波だっけ」と受け入れる他ない現実に心が静まる日々だった。この物語の中心は、そもそも疎遠な関係であった父親が急な認知症を患い、残された手がかりをもとに主人公が迷路を彷徨い何かを見つけようとする旅路である。そこには彼の怒りがあるわけでもなく、父の変貌を嘆く悲しみがあるわけでもない。そんな主人公をカメラは追い、ある種のロードムービーの果てに人間の存在についての確かな手触りのようなものを掴めれば、と願った。
このような作品に寄り添う映画音楽はどのようなものであるべきか。糸山晃司氏とオンラインで何度か議論を重ねた。彼は脚本を読んだ段階でこの物語の核と、そこに流れるであろう空気を掴んでくれていた。撮影後、約15分程度のシーケンスごとに編集し、糸山氏に共有した。しばらくして彼から届いたメインテーマの候補はその時点で既にこの「大いなる不在」の顔つきをしていた。
当初から、登場人物の感情を代弁するような音楽にはしたくないことは共通の想いだった。かといって、対位法のような画との無関係さにより逆に感情を醸すやり方のあざとさも僕は好きではなかった。僕が音楽に求めていたのは、この物語世界を構成する全ての要素に文字通り溶け込み、ユニバース・デプスを深めることだった。だからこそ、あるシーンでは街の雑踏のノイズと共鳴してほしかったし、また別のシーンでは室内の不穏な静けさを指でなぞるように音楽が鳴ってほしかった。それらの全ての僕の要望に対して、音楽家である糸山晃司氏が返してくれた答えは僕の想像を軽々と超えるものだった。
そしてこの音楽たちが、35mmフィルムで撮影された画と精密にデザインされた映画音声とマージされた時、この映画はまさに誰しも記憶の隅にこびりついているであろうあの2020年から2021年の空気を纏うことになった。トロント国際映画祭、サン・セバスティアン国際映画祭をはじめ、世界各国の映画祭での入選や受賞という栄誉に授かった大きな要因の一つがこの映画音楽だと思う。そして映画内の音楽だけにとどまらず、サウンドトラックCDとしてマスタリングされたこの音源に向き合うことができて非常に嬉しく思う。
監督 近浦啓
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《収録曲》
01. Way back
02. Incident
03. Beginning
04. Enter
05. Reflection
06. Something
07. Dementia
08. Empty house
09. Great Absence
10. Memo
11. A gift
12. Confusion
13. Emergency
14. Forgiveness
15. Daydreaming
16. Exit the King
17. Exit the King feat. Mirai Moriyama
【国内盤】
タイトル:大いなる不在 GREAT ABSENCE
アーティスト:koji itoyama
発売日:2024年7月12日(金)
品番:RBCP-3545 JAN:4545933135451 フォーマット:CD
価格:2,970円(税込) ジャンル:サウンドトラック 発売元:ランブリング・レコーズ